「福祉業界は成長市場だ!」「再編の進む福祉業界は新規参入が難しい!」「制度ビジネスだから経営が難しい!」
福祉業界を評する際には、このようなコメントがなされることが多く、実際には成長市場なのか? 参入すべきなのか? と迷ってしまう方もいるかもしれません。
そこで今回は、他業界と福祉業界を徹底比較してみました。
また、障害福祉業界についての市場性についても調べてみましたので参考にしてみてください。
廃業比率 他業種比較(2019年)
医療・福祉業より細かい数値は、経済産業中小企業庁より公表されておりませんが、厚生労働省の資料によると、2019年障害福祉事業所数は、148,726ヶ所となっています。
また、東京商工リサーチによると、障害福祉事業廃業企業数は、2019年で30件とされています。
全体の数は事業所数の数、廃業数は企業数しか行政より発表がなされていないため、障害福祉事業のみの廃業率の算出はできないですが、経済産業省が出している産業別企業当たりの事業所数(付表2)を基に全業種の1企業当たりの平均事業所数を算出すると、約13.7事業所となります。
こちらを基に、障害福祉事業所数から企業数を求めると、 148,726÷13.7=10,855企業となり、障害福事業を行う企業数は、約10,855企業であると予想されます。
10,855企業中30企業が廃業となると、障害福祉事業の廃業率は、0.27%となり、他業種と比較してもかなり低い数値となることが分かります。
2020年企業活動基本調査確報-2019年度実績-|経済産業省
中小企業庁における「2021年版 小規模企業白書 第3節 開廃業の状況」 |東京商工リサーチ
今後の障害福祉業界
障害児者数推移
障害種別内訳(2023年3月発表資料)
障害福祉サービスの利用者数の推移
障害児者数全体は増加傾向にあり、2023年3月発表資料では、1160.2万人となっております。これは、人口の約9.2%に相当します。
原因としましては、高齢者の障害者数の増加、現代社会の環境要因、障害に対する認識の広がり、等が挙げられます。
そのため、障害福祉サービスの需要が高まり、実際に、障害福祉サービスの利用者数の伸び率は、2018年➡2022年の4年間で、約24%の増加となっております。中でも精神障害と障害児の伸び率が大きくなっております。
また、近年、障害者の増加の中でも、精神障害者の割合が最も大きく増加しております。発達障害は、精神障害の1つとして分類されます。2006年から2018年までの精神障害者の推移をみると、約51%も増加していることから、発達障害者も多く増加していることが予想されます。
発達障害とは、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態を指します。ただ、最近は、大人になってから発覚する発達障害の事例も多く見受けらます。
大人になってから、人間関係につまずいたり、仕事がうまくいかなくなったりしたことで、自身の発達障害を疑い受診する人が増えております。そのため、精神障害者の総数が増加し、障害福祉サービスの需要が高まっている原因の一つともいえるでしょう。
障害福祉事業の高まり続ける需要
先に述べた様々な要因のもと、日本の障害者人口は増加しています。
障害者人口が増加するともに、障害に対する正しい認知も増えていることから、障害福祉施設を利用するケースも近年増えてきました。
では、障害者数の増加に伴い、適切な福祉サービスを十分に提供できているのでしょうか。
厚生労働省の調べによると、障害福祉サービスの利用者は平成26年から毎年増加傾向にあります。1年単位で見ても、平成29年から平成30年の1年間での伸び率は6.4%と、障害者数は増加しています。障害者数が増加し続けていることから、必然的に障害福祉施設の需要は高くなっているのです。
障害について正しい認知がされていないときは、障害福祉施設に家族を預けることに対して後ろめたさや抵抗を感じる人も多かったようです。
しかし正しい理解が広まってきた今、まさに障害福祉施設のニーズは高く、より質の高いサービスを提供していくことが重要視されています。
業界動向・今後の動き~ 3.9兆円のポテンシャルを持つ市場 ~
障害福祉サービス関係予算額は15年間で約3倍に増加
障害福祉予算は、国の負担が50%、自治体負担が50%です。下記のグラフは国の予算を示しています。この中に、自治体負担額は含まれていないので、この約2倍の額が、障害福祉事業の総給付費となります。
いかがでしたでしょうか。これだけ顕著に伸びている市場というのも珍しいのではないでしょうか。
また福祉事業は制度ビジネスとも呼ばれるように、安定性が高いのも魅力ですよね。これからの福祉業界にも引き続き注目です。