「サビ管・児発管要件緩和」で福祉経営ブームが到来!?

平成31年度より新体系の資格制度となった、サービス管理責任者と児童発達支援管理責任者。令和4年度からは、OJTの期間が2年へと延びたことにより、サービス管理責任者等の資格が取得しづらくなった現状がありましたが、令和5年6月30日の告示により、OJTの期間が2年から6か月に、特例で短縮する場合があるとのことです。
この告示の詳細や、この告示で福祉事業者にどのような影響があるのか、調査しました!

サービス管理責任者と児童発達管理責任者の基礎知識

サービス管理責任者とは

サービス管理責任者とは、心身に障害のある人の生活環境や特性に応じた支援を提供できるよう、提供するサービス品質の管理や関係機関との調整、サービス提供者に対する技術的な指導を行う職種です。

障害福祉サービス事業所の利用者数に応じて、決められた人数のサービス管理責任者を配置することが、障害者総合支援法とサービスごとの人員基準によって定められています。

サービス管理責任者の仕事内容

(1)個別支援計画の作成

利用者へのアセスメントによって生活環境や心身の状態を把握した上で、本人・キーパーソンの意向を汲みながら支援内容を組み立てます。半年に1回以上を目安にモニタリングを実施し、必要に応じて支援計画を変更するなど、着実に目標達成できる支援を目指していきます。個別支援計画の作成・変更にあたっては、利用者本人との面接と計画書の手渡しが必須です。

(2)ほかの事業所や専門職との連携

個別支援計画に沿って円滑なサービスを提供するためには、ほかの事業所や医療機関などとのチームケアが欠かせません。連携を取る前に利用者や家族などのキーパーソンから同意を得ることが、「知られたくない権利」を含めた自己決定権を尊重する上では重要です。利用者負担額の上限管理など、公的給付制度の有効活用を利用者に促す一面もみられます。

(3)相談援助

利用者の心身状況や生活環境などを把握し、本人や家族・キーパーソンから相談があれば必要なアドバイスを行い、効果的な支援につなげます。サービスに関する苦情対応も相談援助業務の一つであり、利用者の権利と事業所のサービス方針とのバランスをとりながら誠実な対応が必要です。実務では、サービス開始前に障害のある人や家族から相談を受け、相談支援事業所とサービス開始に向けて調整を行う場面もみられます。

(4)事業所スタッフに対する技術指導

事業所全体のサービスの質を高めるために、サービスを提供するスタッフに対するサービス提供技術の助言・指導を行います。支援の場に同席してOJTを実施するだけでなく、事業所内研修会の実施、外部研修参加や上位資格の取得促進など、方法はさまざまです。

これらの業務は、障害者総合支援法の関連法令によって実施が義務づけられている内容です。条文では「療養介護」と限定されていますが、実際には、生活介護などサービス管理責任者が配置されるすべての障害福祉サービスに適用されます。

サービス管理責任者の必要配置

児童発達支援管理責任者とは

児童発達支援管理責任者とは、子どもの成長や発達度合いに応じて、家庭や関係機関などと連携をとりながら療育を推進するリーダーです。個別支援計画の作成をはじめ、質の高い療育に向けてスタッフへの助言・指導に携わります。事業所によっては、管理者と兼務している場合もあります。

2012年の児童福祉法と障害者自立支援法の改正により、障害児支援の強化を目的として、通所・入所の利用形態ごとにサービス体系が一新されたことに伴い新設された職種です。

児童発達支援管理責任者の仕事内容

(1)個別支援計画の作成

個別支援計画(児童発達支援計画・放課後等デイサービス計画)は、障害のある子どもの療育と保護者への支援の根幹をなす重要な書類です。

(2)アセスメントとモニタリング

利用児童の発達状況に応じた個別支援計画の作成と、療育の効果を最大化するために大切なのが、アセスメントとモニタリングの実施です。児童発達支援管理責任者が、障害のある子ども・保護者と直接会って面談を行う必要があります。

児童発達支援管理責任者の必要配置

人員配置に関しては、児童発達支援管理責任者が担当する利用者数上限は児童福祉法には明記されておりません。

2022年7月ごろに東京都庁の担当部署へ確認したところ、放課後等デイサービスに限った話にはなりますが、放課後等デイサービスの定員は10名の場合がほとんどなので、契約者数ベースで行くと30名程度の事業所が多い。ただ、特に上限がないため、事業所が可能な限り、利用者を抱えることが可能との回答でした。

サビ管・自発管の要件の経緯

資格要件について、時系列ごとに整理してまとめました。

平成30年度までの資格要件

平成30年度までは、「実務要件」と「相談支援従事者初任者研修」の一部と、「サービス管理責任者等研修共通講義及び、分野別演習」を受講すれば、OJTがない状態で、即日サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者として配置が可能でした。

平成31年度からの資格要件

令和元年度からの新たな研修体系を前提とした上で、サービス管理責任者等の質の確保を維持しつつ、サービス管理責任者等の人材確保を図る観点から、研修制度が以下のように変更されました。

サービス管理責任者等になるための条件

  1. 実務経験
  2. 相談支援従事者初任者研修の受講
  3. サービス管理責任者等基礎研修の受講
  4. 2年間のOJT
  5. サービス管理責任者等実践研修 ※資格取得後、5年ごとの更新研修

参照:サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修の見直しについて

平成30年度以前と、平成31年度以降の主な変更点

平成31年度~令和3年度までの経過措置

平成30年度までの旧体系研修受講済みの場合

平成31年以降の新体系施行後、5年間(令和5年度末まで)は、更新研修受講前でも引き続きサービス管理責任者として業務可能です。
その後、新体系に則って、5年ごとに更新研修を受講する必要があります。

基礎研修受講時点で実有無要件を満たしている場合

基礎研修受講時点で実務要件を満たしていて、平成31年度~令和3年度内に基礎研修を受講している方は、基礎研修受講3年間は実践研修を受講していなくてもサービス管理責任者等とみなされ、実務が可能となります。

その間、2年以上の実務を経験することで、実践研修の受講が可能となり、その後は新体系に則って、5年ごとに更新研修を受講する必要があります。

サビ管・児発管の不足が問題の解決によって、福祉経営が加速する!?

令和5年6月30日開示「サービス管理責任者に関する告示の改正について」

課題

平成31年度からの研修体系の見直しについて、一部の事業者から、サービス管理責任者等を直ちに確保することが困難となり、支障が生じているとの声がありました。また、令和元年度以降、新型コロナウイルスの影響により、都道府県が研修を延期・中止、規模を縮小しての実施とせざるを得えなくなり、十分に研修が実施できていないといった地域もあり、事業者や自治体から令和3年度まで設けていた上記経過措置の継続や研修体系の見直しの要望がでています。

変更内容

令和元年度からの新たな研修体系を前提とした上で、サービス管理責任者等の質の確保を維持しつつ、あわせてサービス管理責任者等の人材確保を図る観点から、以下の対応を行いました。

●実務経験(OJT)

基礎研修修了後に実践研修を受講するために必要な実務経験(OJT2年以上)について、基礎研修受講開始時において既に実務経験者である者が障害福祉サービスに係る個別支援計画の作成の一連の業務に従事する場合は、「6ヶ月以上」とします。

●やむを得ない事由による措置

やむを得ない事由によりサービス管理責任者等が欠如した場合、欠如後1年間は研修の修了状況に関わらず、実務経験要件を満たす者をサービス管理責任者等とみなして配置することを可能としている従来の措置に加え、基礎研修修了者については、個別支援計画の作成に関して一定の知識・技能等を習得していること、事業所内でのサービス管理責任者等の養成を進める観点から、以下のいずれの要件も満たす者について、当該者が実践研修を修了するまでの間に限り、サービス管理責任者等とみなして配置可能(最長2年間)とします。

  • 実務経験要件を満たす者であること
  • サービス管理責任者等の欠如する以前から当該事業所に配置されている者であって、かつ、欠如時に既に基礎研修を修了しており、実践研修の受講に向けたOJTを実施中である者

要件緩和によって、見込める課題解決

基礎研修修了者(5年以上の実務経験)は、要件を満たしていればOJT(実務経験)が2年以上から6ヶ月以上となり、サービス管理責任者等の養成期間が大幅に短縮されます。

実際に、障害福祉事業所を運営している事業者や、今後障害福祉事業を展開予定の事業者から、サビ管等の資格者確保に関する懸念の声が多く上がっておりましたが、法改正により、サビ管等の資格保有者確保は、以前よりもハードルが低くなり、また、新たにサビ管を取得する場合でも、以前よりも短い期間で配置が可能となりますので、この部分が大幅に解消された今後は、より、障害福祉の経営は、加速していくことが予想されます。

この法改正に加えて、障害福祉事業の安定性は、運営事業者としてもかなり魅力的な事業となるのではないでしょうか。

ここで、障害福祉事業者の方々に注意が必要なのが「総量規制」です。

2024年度からは、介護分野にならって、障害福祉事業の総量規制がスタートし始めることが予想されます。そうなると、いくらサービス管理責任者の要件が緩和されても、障害福祉事業の展開は見込めなくなります。

サービス管理責任者等基礎研修修了後のOJT(実務経験)に関する法改正はもちろんですが、障害福祉事業に関する法改正の内容と時期については、今後も細かくチェックして把握しておくことが重要です。

※参照:サービス管理責任者等研修制度について

資格要件の緩和について、関係機関に聞いてみた

職能団体に聞いてみた!

一般社団法人サービス管理責任者協会

サービス管理責任者協会は「障がい児・障がい者の命と暮らしを守る」を理念にかかげ、サービス管理責任者の資格を持つ個人が自主的に加入し運営する、日本最大のサービス管理責任者職能団体です。

Q:今回の「サービス管理責任者に関する告示の改正について」開示がありましたが、どのような変化がありましたか?またはどのような変化を予想されますか?

A:会員から自身の実務経験でOJT期間が短縮になるかどうかの問い合わせは多くなりました。協会としてはサービス管理責任者(ここでいう行政配置が可能な方)の有資格者が増えることは障害福祉分野にとって喜ばしいことですが、当初OJT期間を設けるのに至った経緯(サビ管としての質の確保)がきちんとなされず、有資格者だけが増えるという事は避けてほしいと願っております。当協会としては引き続きサビ管の質の向上を目的とした研修を続けていく予定です。(事務局スタッフ談)

サビ管・児発管の人材紹介会社に聞いてみた!

スターメッド株式会社

スターメッド株式会社は、女性が生き生きと働ける社会をつくるために、障がい福祉の求職サービス・障がい福祉の求人サービス等を行っている会社です。また、24時間保育所の運営・シッティングサービスや訪問看護ステーションの運営を行っております。

Q:今回の「サービス管理責任者に関する告示の改正について」開示がありましたが、どのような変化がありましたか?またはどのような変化を予想されますか?

A:今後、サービス管理責任者等基礎研修を受講する人が増えることが予想されます。また、第2サビ管としての行政配置やみなし配置をする事業所が増えることから、法人へのアプローチ方法が増えるのではないかと考えております。一方でOJT期間の短縮については歓迎すべき事ですが、各自治体で行われる実践研修の回数については言及がないことから、受講者数だけが増えてしまったという結果になりかねない事が想定されます。(事業責任者談)

株式会社日本厚生事業団

日本厚生事業団は、超高齢社会であるわが国でもっとも迅速にイノベーションを求められる医療・介護・福祉分野において、マーケティングと集合知(コミュニティ)の力で変革をもたらすことを目指す法人です。

Q:今回の「サービス管理責任者に関する告示の改正について」開示がありましたが、どのような変化がありましたか?またはどのような変化を予想されますか?

A:弊社にご登録頂く求職者様、求人企業様の依頼内容に少しずつ変化がございました。改正までは即配置が前提で案件が進むことが多くございましたが、OJT期間の短縮により弊社としてもお取り扱いできる求人拡大、転職支援の幅が広がっていくと想定しております。
今後、弊社としてもより福祉業界の人手不足を解消できるよう尽力していく所存ですが、業界的に良い流れができるかと考えております。

福祉経営を推進する企業に聞いてみた!

株式会社アニスピホールディングス

株式会社アニスピホールディングスとは、ペット共生型障がい者グループホーム事業などを経営する企業です。「イシュー・ドリヴン・カンパニー」(社会課題を解決することによって成長していく会社)を理念に掲げ、障がい者のハウジングファーストと動物の殺処分ゼロをミッションとして事業に取り組んでいます。

Q:今回の「サービス管理責任者に関する告示の改正について」開示がありましたが、どのような変化がありましたか?またはどのような変化を予想されますか?

A:生活支援員や世話人などが、サビ管の有資格者として更なるスキルアップを短い期間でできるようになったというメリットの反面、期間の緩和により支援の質が落ちてしまうのではないかという懸念点も伺えます。

直営事業部としてはサビ管受講資格がある職員には積極的に第二サビとして業務していただき支援の質をこれまで以上にあげたいと考えております。 採用面に関しては第二のサビとして積極的に採用し、質の向上に努めます!

まとめ

サービス管理責任者の資格要件緩和に伴い、サビ管人口が大きく増加するのではないかと思われます。それによって障害福祉業界の事業者参入・店舗展開が進み、業界全体の活性化につながるのではないでしょうか。実際に影響が出てくるのはもう少し後になりますが、引き続き注目です!